派遣キャバ嬢リカのNO1への道

これは私がたくさんの人々の支えのおかげでNO1になっていくまでの物語

気付き

体験入店当日・・・。

大山「早かったですね。」

リカ「お待たせしてすみません。」

待ち合わせの時間に早めに向かったのに到着している大山さんと出会う。

大山「?」

リカ「どうかしましたか??」

大山「なにかありましたね・・・。彼氏の件ですか?」

リカ「あ、はい・・・。」

大山「ちょっと喫茶店に入りましょうか!」

リカ「時間大丈夫なんですか??」

大山「早めに来てるんで大丈夫です。逆にそんな顔してたら面接落ちるかもしれませんからね。」

冗談めいた口調で喫茶店へ案内され、

「いらっしゃいませ」

退屈そうな店員に案内され、窓ぎわの席に座る。

大山「ホットコーヒーで。どうします??」

リカ「同じもので。」

注文をして、一息ついて・・・。

大山「やっぱり反対されましたか?」

リカ「分かります??。」

大山「はい。彼氏からしたら、なんでだよ!!。って感じですからね。」

リカ「そういうものなんでしょうか?。」

大山「例をあげましょうか。彼氏がホストになりたい!って言ったら止めませんか?。」

あ!

大山「そういうことです。」

彼は少し含み笑いをしながら語り始める。

大山「こういった水商売、女の子が一番辞める理由はなにかわかりますか?」

リカ「えーっと・・・。」

なんだろう?。

私の回答を待ちながら、

大山「親バレと彼氏バレ、つまりバレることです。」

なるほど。

大山「親からすれば水商売に行くために育ててきたんじゃない!となるでしょうし、彼氏からすれば、自分の好きな女の子を他の男に取られたくない!という自尊心が働きますからね。そういうケースはよくあります。」

リカ「はい・・・。」

大山「でも、落ち込むことはありません。ご自身が現段階で彼氏と結婚すると言い切れますか?」

リカ「・・・。」

大山「5年後も好きでいれると言い切れますか??。」

・・・・・・・・・。

リカ「今回の件もあって正直自信がないです。」

大山「そうなりますよね。でもリカさんが困っている事実は変わりませんし、やりたいことをやるにはお金が必要。」

リカ「はい」

大山「それをやるために彼氏の許諾が必要なこと自体、意味のないことだと思います。」

そんな・・・はっきり。

大山「水商売をやる人の中には、バレなきゃいいと考える人が多いの事実です。」

そうなんだ・・・。

大山「でも、そういう筋道を通して生きることはとても大切なことです。」

リカ「はい・・・。」

大山「今はご自身に一番何が必要か??。それを客観的に捉えることが大切です。リカさんが求めているものはなんですか?」

まっすぐ見つめられながら・・・。

リカ「お金です。」

自然と言葉が出た。

大山「では、それが答えです。」

そっか。そうなんだ!

大山「だからといって、彼氏さんのこともあきらめる必要はないですよ。」

え!!

大山「彼にとって魅力的な女性になったらいいんです。彼が毛嫌いする水商売で働いていても彼女にしたいと思える女性になれば・・・。」

リカ「そう・・・ですよね!」

ようやく目の前の霧が晴れていくような気がする・・・。

ただ・・・。

リカ「水商売って汚いんでしょうか??」

彼氏に言われて一番疑問に思った言葉。。

大山「うーん。どうでしょうね・・・。」

少し考えながら、ニヤリと笑って、

大山「それも含めて確かめにいきましょうか!」

リカ「え?」

大山「その目で見て確かめれば、良ければ彼氏に良さを伝えられるでしょうし、悪ければやめればいいんです。」

リカ「そんなのでいいんですか?」

大山「はい。最初から自分の道が正しい道かなんて誰も分かりませんからね。」

たしかに・・・。

大山「ちなみに僕も水商売出身なので、僕を見ていただいたら分かるかも?。」

リカ「大山さんはいい人だと思います。」

こうして話を聞く時間までとっていただいて。

大山「なら、その印象で入りましょう!。困ったときはいつでもサポートしますので。」

リカ「はい!」

茶店を出て、体験入店に向かう道の中、私の心が晴れていくのを感じたのでした。

別れ

彼ならきっと分かってくれる!

その期待を胸に彼と会う約束をする。

「なんかあった??。大丈夫??」

会った途端、彼から心配の言葉がもれる。

リカ「ん?。なんで??」

「学校終わりに急に呼び出すから。。少し気になって」

心配してくれたんだ・・・。

胸が熱くなるのを感じながら、切り出す。

リカ「あのね・・・。私。。。」

「うん・・・。」

しばらくの間のあと、

リカ「水商売のアルバイトをしようと思うんだけど・・・・。」

「水商売?!」

リカ「うん・・・。ダメかな??」

「ダメというか・・・。なんで??」

そうだね・・・。理由を言わないと。

リカ「去年に父が亡くなって、家の事情で今後授業料を払うことができなくなりそうなの。。」

「え!!」

リカ「弟が大学に進学したいって言ってるし、そのお金も・・・。」

「なんで言ってくれなかったんだよ!」

彼の言葉が強くなる。

「言ってくれたら俺だって。。。」

リカ「でも・・・。これは私の問題だから。」

「俺が父さんに頼んで。。」

そう、彼のお父さんは有名な事業家で・・・。

リカ「そんなの頼めないよ。迷惑をかけることになるし。」

「迷惑なもんか!。水商売ってその・・・好きでもない男に声をかけられたりするってことだろ??」

リカ「うん。でもみんなやってるし。。」

「そんな男たちと付き合って、その・・・関係を持ったりってことだろ。」

リカ「そんな大げさだよ。」

「そんな汚い世界にリカが行くのは絶対に嫌なんだ!」

汚い・・・?。

リカ「汚いって何??。」

「だってそうだろう!。好きじゃない人と付き合って、その人からお金を搾り取る!。それのどこが汚くないって言うんだよ!」

そんなこと言ったって・・・。

リカ「私だって好きでやるわけじゃないけど、ある程度の説明を受けて大丈夫だって分かったからこうして相談してるし。」

私なりに悩んだし。

リカ「でも、今はこうするしかないから。聞いてるだけなのに。。」

「説明を受けたってことは、そういう仕事をしたってことなのか??」

リカ「・・・」

「そんな女だとは思わなかったよ!」

彼は吐き捨てるように言うと、私から目線を外し二度と目を合わせることはなかったのでした。。

誕生

「在籍」

派遣という形ではなく、お店に籍を置くということ。

大山「いかがです??。1回体験入店に行かれてみては??」

在籍・・・。

「在籍の方がお金がいいんですか??」

大山「そうですね。バイトと正社員みたいなもので、派遣はその場をつなぐだけですが、在籍の方はお客様を呼んだりなどの可能性ができるので時給が出るお店もあります。」

なるほど・・・。

ただ・・・。

「在籍もいいんですが、彼氏にはバレませんかね??」

そう。私には大学に入って1年目に付き合い始めた彼氏がいる。

大山「基本的に言わなければばれないとは思いますが、説明しておいた方が辞めさせられるリスクは減るかもしれません。」

彼に説明・・・。

いや、無理だ!!

他の男の子と話すだけでやきもちを焼く人なのに・・・。

大山「あとは物事の優先順位の話になりますね。なんのためにここに来たのか??」

なんのため・・・。

お金を稼ぐため。。

お金を稼いで、自分と弟の授業料を・・・。

大山「彼氏という存在が大事なのはわかりますが、彼氏の言うことを聞いてもお金は発生しないかもしれません。自分が来ようと思った動機のお金を手に入れられるかどうかはご自身の判断になります。」

「わかりました!。彼に話してみます!」

そう!。ちゃんと伝えれば分かってくれるはず!

彼なら!!

大山「では派遣の方も登録しておきます。源氏名は何にします??」

説明が終わり、大山が問いかける。

源氏名??」

大山「そうです。女優さんたちが使う芸名のようなものです。」

芸名・・・。

「みんなどうやって名前を決めるんですか??」

大山「好きなアーティストだったり、女優さん。友人の名前など・・・。」

「うーん・・・。」

どうしよう。

大山「あとは自分の名前の順番を入れ替えたりとか・・・」

入れ替え、、、反対から読んで・・・。

リカ「リカでお願いします!!」

大山「かしこまりました!。リカさんで登録しておきますね!!」

ここに派遣のキャバ嬢「リカ」が誕生したのでした。。

挑戦

「はい・・・はい。よろしくおねがいします。」

派遣の面接日当日。

待ち合わせの場所に来るように言われ、電話を切る。。

ちょうどビルの前での待ち合わせ。どんな人が来るんだろう。。

電話では女性だったから、女性が来てくれるのかな??。

しばらく待っていると、

「派遣の登録の方ですよね??」

黒いコートに身を包んだ、メガネをかけた色白の男性が声をかけてきた。

「はい。よろしくおねがいします。」

大山「私は派遣会社の大山と申します。よろしくおねがいいたします。」

丁寧な挨拶でビルの中へ案内された。

ビルの一室に案内され、面接室のようなところに通される。

大山「緊張してます??。」

「だ、大丈夫です!」

緊張したことを指摘され、とっさにウソをついてしまった。

大山「大丈夫ですよ。説明してすぐ登録になりますので」

男の言われるままに、渡された用紙を確認し、説明を受けていく。

「本当にいつでも入れるんですか?」

大山「基本的に案件が多い・少ないは日によって変わりますが、その日に案件があればだいたい入れます。」

「北新地とかでも働けるんでしょうか・・・?」

北新地。

大阪で働く上で、ちゃんと調べてきた。。

大阪の北新地は高級な飲み屋街なので、時給が高く出ると。。。

自分の授業料と、弟の大学進学のお金を考えると、稼げる金額は多い方がいい。

大山「経験者の方ですか??」

「・・・水商売ですよね??」

大山「はい。」

「ないです。」

大山「北新地でももちろん働けますが、最初はそんなに時給は高く出ないですよ。」

「え??。いろんなサイトを見ましたが、北新地は高い時給が出る!って書いてありましたよ。」

大山「はい。高い時給が出るお店はあります。」

だったら・・・。

大山「では、質問です。あなたがコンビニに面接に行きました。」

何を突然・・・。

大山「コンビニで採用されました。その時の時給が店長と同じぐらい出る確率は何%ですか??。」

ん・・・・。

「そんなの初めてなので、出るわけないじゃないですか!」

っは!

そうか・・・。

大山「気づきましたかね。確かに水商売は高いお給料のお店が多いですが、お店のランクによってはピンきりです。」

「・・・。」

大山「時給が2500円のところもあれば、その倍以上の額を出すお店もあります。」

「・・・。」

大山「ただ、高いお店になればなるほど、お客様のランクも上がり経営者のような方々になると・・・」

そう、初めての仕事でそんなにいきなりお金が出るわけがない。。

大山「でも、最初からでも時給が出る方法はあります。」

え?!

「どうやったら!!」

思わず、叫んでしまっている自分に気付く。。

大山「在籍なら、頑張れる子だと分かれば見込みの時給を出してくれます。」

在籍・・・。

その2文字が私の頭の中をぐるぐる回っていたのでした。。

 

転機

父の死から1週間。

すべてが変わっていきました。

自分のやりたいことがある!!

と無理を言って行かせてもらった4年制大学。

うちの家は決してお金持ちではなかったのですが、

「私達のことは気にせずにやりたいことをやりなさい」

そう言って送り出してくれました。

大学の授業料に加え、生活費の仕送り。

弟が受験を控えているので、仕送りがキツくなっているのも分かったから、

私も飲食店でアルバイトを始めたのに・・・。

「ごめんね。授業料のこと・・・。」

父の死を目の前に自分の授業料を支払うことを気にする母に申し訳がない。

「僕も姉ちゃんと同じところに行く!」

そう言って、大阪に来ると言っていた弟の夢までなくなりそう。。

飲食店でのアルバイト代を計算してみる。

時給1000円の5時間・・・週3日を増やして、、、

・・・

ダメだ!!

どう考えてもお金が足りない。。。

そんな時、友達のかなの言葉を思い出した。

「水商売??。絶対私には向いてないよ~。」

かな「結構稼げるっていう話だし、今度一緒に聞きに行こうよ~。」

結構稼げる。。。

その言葉が私の頭の中から離れなくなってしまったのでした。。

派遣のキッカケ

私が派遣のお仕事に出会ったのは去年の冬・・・。

ちょうど誕生日を迎えた頃だった。

「あんたも今日で20歳になるけん。大人だけんね。」

「20歳になったらやりたいこといっぱいあったんだ~。アルバイトでお金も貯まったから、またお母さんの誕生日プレゼント買っておくね!」

1月の母の誕生日。島根県への帰省も兼ねて、大阪の飲食店で貯めたお金でお母さんと弟、そしてお父さんにプレゼントするはずだった。。

帰省日当日。帰省の夜行バスの中、

ブブブブ、ブブブブ・・・。

携帯のマナーモードの音が鳴り響く。

「お母さんごめん。今バスだから」

慌てて伝えると、

「おとうさんが!!」

私以上に慌てたおかあさんの大声が車内に響き渡り、

私の人生が変わっていった瞬間だった。。。